2007年に出版された書籍「Seiffen in acht Jahrhunderten(ザイフェンの800年)」は、ザイフェンの産業のなりたちや、時代の中での盛衰、現在に至るまでの変遷を著した歴史書でありながら、そこにはヴァルターの作ったミニチュアよって、歴史の流れのなかでの庶民から貴族まであらゆる人々の暮らしがわかりやすく生き生きと表現されています。例えば鉱山での採掘から精錬、加工の様子や鉱夫のパレード、15世紀頃栄えたガラスの工房、木こりや狩猟、バロック音楽のコンサートや18世紀以降に発達した木製玩具作り、など当時の生活やさまざまな仕事の特長を、わかりやすい場面で切り取り製作していて、其の作品群は写真よりも多くのものを伝えてくれるようです。

その中から、ここではろくろ工房と、麻布の製作をご紹介します。 ザイフェンの鉱山は19世紀に入ると徐々に衰退していきましたが、かつて錫の岩を砕くために使われていた機械が新しい産業=木工のおもちゃ作りの原動力となっていったのです。ザイフェンはこうして ろくろの町に変わっていき、かつての鉱山労働者たちは見事なろくろ引き、みごとな木工玩具職人に変身していきました。水車一台の動力を、大きな部屋に並んだろくろに分散させ、一度に6台から10台の木工用ろくろを回すことができる作業場が作られました。そして経済力のない職人たちに、ろくろ台を時間で賃貸するシステムが生まれました。それは結果的にこの地で多彩な玩具が生まれることに貢献したシステムとなりました。たくさんの木工職人が大きな部屋に並んだろくろで、それぞれに製作している様子が詳しく描きだされています。(写真1.2.3.)

麻布を作る様子では、農家の人達が麻を栽培し、刈り入れ、繊維を取り出してつむぎ、織りあげた布を水にさらしては日光に当てることを繰り返して漂白し、出来上がった反物を馬車に積んでドレスデンに出荷する様子まで、過程ごとにその場面のジオラマ(立体模型)が制作されています。人形達が作業に従事する様子は、絵や写真で見るのとはまた違った魅力を持ち、観る人はその暖かい雰囲気に引きこまれます。現在このミニチュアの作品群はヴァルター・ヴェルナーの工房に保管されています。(写真4〜9)


参考文献:Walter Werner,Seiffen in acht Jahrhunderten, Verlag Klaus Gumnior,2007




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1.2.3. ろくろ工房の様子
4.5.6.7.8.9. 麻布を作る様子

画像 『Seiffen in acht Jahrhunderten(ザイフェンの800年)』2007年Verlag Klaus Gumnior社刊より


 

 








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