■手作りへのこだわり
|
1911年、Kaemmer und Reinhardt社はケテ・クルーゼ夫人とライセンス契約を結び、人形をつくりますが、あまり成功しませんでした。そこで夫人は自らの手で人形をつくることを決心します。自宅を工房にして、1人の画家と5人のお針子と共に夫人の人形づくりは本格的にスタートします。アメリカから入った150体という大口注文にも、1体1体愛情を込め、手作りで応えたのです。
ケテ・クルーゼ夫人の変わらぬ信条、それは「手作り」へのこだわりでした。『手のぬくもりは心に必ず通じるものであり、それが一番シンプルに形に表せるものとして「人形」ほど説得力があるものは他にない』と彼女は力説しています。又、『人形は愛情を呼び起こすことができる不思議な力がある』とも言っています。
ケテ・クルーゼ夫人が人形をつくりはじめてから100年経った今日までその哲学は守られ続けてきました。
|
■ケテ クルーゼ人形の特長
|
ケテ クルーゼ人形には創業以来さまざまなモデルが発表されており、材質や構造も100年の間に改良されています。モデルによってサイズや顔の表情も異なっており、コレクターが世界中に多くいる人形としても有名です。
人形にはそれぞれ名前が付けられており、ミメーレ(Mimmerle 写真1)やフィフィ(Fifi)、フリッツ(Flitz)そしてヨッケーレ(Jockerle)などケテ・クルーゼ夫人の子どもたちの愛称がついたものが数多く見られます。毎年発表される人形の洋服や髪形は毎年変わりますが、ミメーレだけはケテクルーゼ人形の象徴として当初の雰囲気をそのまま残して作り続けられています。
頭部は当初、顔には肌色のラミー織り(イラクサの繊維で織った丈夫な平織)が使用され、中身にはシカの毛をつめていました。1955〜1960年にかけて顔はセルロイドに変わり、1960年からは徐々にポリスチレン樹脂材へと移行、これによって油性絵具が使用できるようになり、水に濡れても色が落ちず重ね塗りもできるようになりました。顔は丁寧な手描き。中でも目は重要で、描くことを許されている職人はほんのわずか、瞳を描くには最低2年の修業を要すと言われています。頭部と体ははじめ、縫い付けられていましたが、1929年から首の空洞部分に回転玉をはめ込むことによって頭を回転させることができるようになりました。
髪の毛は手作業で毛を1本ずつ下地の布に針で植えつけてかつらをつくってから頭部に縫い付けます。体は「柔らかく抱くと温かみが感じられ、子どもの遊びに適しながらも重みを持たせた人形」として、その要求に応える素材である布地が用いられています。
35cm以上の人形には腰に円盤状の関節があり、34cm、25cmのタイプは体の内部にワイヤーが入れてあります。それによりケテクルーゼ人形は体を思い通りに動かすことができます。
洋服も素材はもちろんのこと、製作においてもクオリティの高さと完璧さにおいて他の追随を許さず、細かい刺繍が施されたベストや模様が美しいプリーツスカート、麦わら帽子やオールドスタイルのニッカーボッカーズなど本格的。コレクターも多く、戦前などに作られた人形や洋服は人気があるとの事。
ケテ クルーゼ人形の病院(修理工房)もドナウヴェルトにあります。世界中から届けられる壊れた古いケテ クルーゼ人形が新しい髪や手足をつけてもらい、また持ち主のところへ元気になって戻って行きます。
|
■ケテ クルーゼの試み
|
1925年、産婦人科の依頼を受けてケテ・クルーゼが作った、まるで本物と見間違うような赤ちゃん人形Traeumerchen(写真2)。これは病院で看護士が実習時に使うために作られたもので、本当の赤ちゃんとほぼ同じ重さになるよう体の中には砂入り。まだ据わっていない赤ちゃんの首をしっかり手でささえる練習ができるよう、頭にも重みを持たせて、おへそもきちんとついています。とても画期的なこの育児人形はセンセーションを巻き起こし、人形や玩具業界のみならず教育界やBazarなどの女性雑誌でも大きく取り上げられました。看護士や保育士、そして母親学級の女性たちはこの人形を使って抱っこや授乳の仕方、そしてお風呂の入れ方を学習することが出来ます。育児人形は現在もミュンヘンにある赤十字病院で活躍していると聞いています。残念ながらこの十数年来、この人形の生産は中止されています。
|
■ケテクルーゼ・クラシック人形
|
2005年春に発表されたケテクルーゼ・クラシック人形は以下のとおり。
この中には1990年以降新しくプログラムに加わったものも数多く含まれています(☆印)。
サイズ |
シリーズ名 |
初製作年 |
|
備考 |
54cm
|
Lolle |
2005 |
|
☆ |
52cm |
Puppe VIII |
1929 |
|
|
48cm |
Bambina |
2003 |
|
☆ |
47cm |
Puppe XII |
1932 |
|
|
42cm |
Glueckskind |
1931 |
|
|
41cm |
Elea/Sophie |
2001 |
|
☆ |
40cm |
Pummelchen |
1995 |
|
☆ |
36cm |
Mini Bambina |
2004 |
|
☆ |
35cm |
Puppe IX |
1929 |
|
|
34cm |
Schummelchen |
1991 |
|
☆ |
32cm |
Liebeskind |
2005 |
|
☆ |
30cm |
Planscherle(Badebaby) |
1963 |
|
|
28cm |
Goldkind |
2003 |
|
☆ |
25cm |
Daeumlinchen |
1957 |
|
|
25cm |
Herzelieb |
1997 |
|
☆ |
|
|
|
|
|
1
|
|
2
|
|
|
|